「子どもの教育資金、学資保険と変額保険どっちがいいですか?」
住宅の相談を受けていると、ついでにこの質問をされることがよくあります。
これまでは「うーん、どちらかと言えば…」と歯切れの悪い返事をしていましたが、
これからは答えが変わります。
どっちでもなく、まず「こどもNISA」でいいと思います。
2027年1月から始まるこどもNISA。
この10月から、ネット証券を中心に口座開設の事前受付が始まりました。
保険を売る立場ではないFPとして、なぜそう思うのかを率直に書いてみます。
こどもNISAって、どんな制度?
ひとことで言えば「NISAのつみたて投資枠を、0歳から使えるようにしたもの」です。
運用で増えた分に税金がかかりません。
| 項目 | 内容 |
| 対象 | 0〜17歳 |
| 年間の投資枠 | 60万円(月5万円ペース) |
| 非課税で持てる上限 | 600万円 |
| 買えるもの | つみたて投資枠の対象になっている投資信託(個別株は不可) |
| 引き出し | 12歳以降。子ども本人の同意書面が必要で、使い道は教育費など子どものためのもの |
| 18歳になったら | 大人のNISA(つみたて投資枠)へ自動で移る |
| スタート | 2027年1月。SBI証券などで2026年10月から事前受付 |
以前あった「ジュニアNISA」は18歳まで原則引き出せず、使い勝手の悪さから広がりませんでした。
今回は12歳から引き出せます。中学・高校の入学費用にも使えるようになったのが、いちばん大きな違いです。
もうひとつ。年間60万円を上限まで使う必要はまったくありません。
月5,000円でも1万円でもいいんです。
学資保険と比べてみる
学資保険のいちばんの弱点は、ほとんど増えないことです。
いまの返戻率は、おおむね100〜105%程度が一般的と言われています。
月1万円を18年間払うと、払う総額は216万円。返戻率105%なら受け取りは約227万円です。
18年かけて増えるのは約11万円。
その18年のあいだに、学費も物価も上がります。
「減らない」けれど、お金の価値としては目減りしている可能性が高い。
ここが、インフレの時代に学資保険を勧めにくい理由です。
同じ月1万円・18年間を投資信託で積み立てた場合の試算です。
| 積立の方法 | 18年後の金額(元本216万円) |
| 学資保険(返戻率105%) | 約227万円 |
| こどもNISA(年3%で運用できた場合) | 約286万円 |
| こどもNISA(年5%で運用できた場合) | 約349万円 |
もちろん投資なので、このとおりに増える保証はありません。減る年もあります。
それでも10年・15年と続けるなら、学資保険より有利になる見込みは十分あると私は考えています。
もうひとつの弱点は、途中でやめると損をすること。
学資保険は途中で解約すると、戻ってくるお金が、それまでに払った保険料の合計を下回ることがほとんどです。
いわゆる元本割れです。
家計が苦しくなったときに、いちばん頭の痛い契約になります。
積立投資なら、金額を減らすのも一旦止めるのも自由です。
変額保険と比べてみる
「学資保険は増えないから、運用できる変額保険を」と勧められた方も多いと思います。
でも、運用したいなら保険を経由する理由がありません。
変額保険は、死亡保障と投資信託での運用がセットになった商品です。
セットであるぶん、コストが二重三重にかかります。
- 保険契約関係費:契約の締結や維持・管理、死亡保障のための費用
- 資産運用関係費:運用部分にかかる信託報酬など
- 解約控除:一般的に契約から10年未満で解約・減額すると差し引かれるペナルティ
つまり、払った保険料の全額が運用に回るわけではありません。
しかも満期保険金や解約返戻金に最低保証はなく、元本割れのリスクは投資信託と同じようにあります。
一方、こどもNISAで買えるのは、販売手数料ゼロ・信託報酬が一定水準以下という条件をクリアした投資信託だけ。
そのうえ運用益は非課税です。
同じ「投資信託で増やす」なら、コストが低くて税金もかからないほうを選ぶのが自然ですよね。
「でも保障がついているでしょう?」という声もあります。私の答えは、保障と運用は分けて考えるです。
親に万一のことがあったときの備えは、掛け捨ての保険で必要な期間だけ持てば十分。
住宅ローンを組んでいる方なら、団体信用生命保険ですでに大きな保障を持っています。
教育資金の積立にまで保障をくっつける必要があるのか、一度立ち止まってほしいところです。
3つを並べると
| 学資保険 | 変額保険 | こどもNISA | |
| 増え方 | ほぼ増えない(返戻率100〜105%程度) | 運用しだい | 運用しだい |
| 元本割れ | 満期まで持てば基本なし。途中解約はほぼ元本割れ | あり | あり |
| コスト | 保険料に含まれていて見えにくい | 保険の費用+運用の費用+解約控除 | 信託報酬のみ(販売手数料ゼロ) |
| 運用益への税金 | かかる場合あり | かかる場合あり | 非課税 |
| 途中でやめる・減らす | しにくい | しにくい(10年未満は解約控除) | 自由 |
| 使える時期 | 契約で決めた時期 | 解約すればいつでも | 12歳以降 |
| 親に万一のとき | 以後の保険料が免除され、祝金・満期金は受け取れるタイプが多い | 死亡保険金が出る | 保障なし(別に備える) |
保険に分があるのは、親に万一があったときの保障と、学資保険の「満期まで持てば減らない」という安心感です。
前者は掛け捨ての保険で補えます。後者をどこまで重く見るかが分かれ目です。
こどもNISAにも注意点はあります
いいことばかり書くのもフェアじゃないので、気をつけたい点も並べておきます。
- 元本保証はありません。 入学直前に相場が大きく下がることもあり得ます。使う時期が見えてきたら、数年前から少しずつ現金に移していくのが現実的です。
- 12歳までは原則引き出せません。 小学校までに使うお金は別に用意を。
- 口座のお金は子どものものです。 引き出すには本人の同意が必要で、親の都合では使えません。
- 祖父母からの資金は贈与になります。 年60万円だけなら基礎控除110万円の範囲内ですが、ほかの贈与と合算される点はお忘れなく。
- 金融機関は最初によく選んでください。 NISA口座は1人1口座。買える商品も金融機関によって違います。
それでも学資保険が向いている方はいます。
値動きを見るのがどうしてもストレスな方。
手元にあると使ってしまうので、簡単には崩せない仕組みがほしい方。
「増えなくていいから確実に」と割り切れるなら、それも立派な選択です。
もうひとつ大事なこと。
こどもNISAを始める前に、親自身の家計が回っているかの確認が先です。
住宅ローンの返済、生活防衛資金、自分たちの老後資金。
ここが手薄なまま子どもの口座にお金を入れてしまうと、いざというときに動かせません。
まとめ
教育資金を「増やしながら貯めたい」なら、まずこどもNISA。
親の万一には掛け捨ての保険で備える。保険で貯めるのは、そのうえで「それでも」という理由があるときだけでいい。
これが私の結論です。
すでに学資保険や変額保険に入っている方は、あわてて解約しないでください。
解約のタイミングしだいで損が出ます。
続ける・払い済みにする・やめる、どれが得かは契約内容によって違います。
教育資金は、住宅ローンや老後資金と同じ財布から出ていくお金です。
「うちは月いくらまでなら無理がない?」「いま入っている保険はどうする?」と気になった方は、
お気軽にご相談ください。
あいFP事務所は保険を売ることを目的にしていないので、家計全体を見たうえで率直にお答えします。
※この記事は2026年10月時点の情報です。制度の細かい取り扱いは金融機関によって異なり、今後変わる可能性があります。
試算は月次複利による一定利回りでの概算で、将来の運用成果を保証するものではありません。
特定の商品を推奨するものでもありません。
株式会社あいFP事務所 菊地智恵